三端子レギュレータ回路

前回記事を書いた水槽への自動給水システムでは三端子レギュレータといったものを使用してDC12Vの電源からDC5Vの電源を作って、リレーの駆動を行いました。本記事ではその時用いた三端子レギュレータに関して説明したいと思います。

目次

電源

電気で物を動かす時、必ずと言っていいほど使用するものがあります。それは物を動かす際のエネルギー源の電源であり、電子工作を行う際には必ず必要になります。

この電源なのですが、基本的には下記に示す2タイプの電源があります。

  1. 直流電源(DC電源 : Direct Current Power Supply)
  2. 交流電源(AC電源 : Altanating Current Power Supply)

直流は流れる電流(電圧)がずっと一定なイメージで、交流は電流(電圧) が時間で変化するイメージになります。図で表すと下記の通りになります。

直流電源 交流電源 イメージ

基本的に電子工作で用いる電源としてはDC電源を使用しており、三端子レギュレータを用いた電源もその一種になります。

DC電源

先程述べたDC電源は主に2種類の方式があります。

  1. ドロップ方式
  2. SW(スイッチング)方式

ドロップ式電源に関して

ドロップ式電源はトランジスタやFET等の能動素子を使って、電圧及び電流値を制御する方式になります。動作としては下記のように制御信号を元に電圧Vo及び電流Ioを制御致します。この時VinからVoへ変化させる際に必ず電圧降下が生じる為、ドロップ方式電源と呼ばれております。

ドロップ方式電源 イメージ

この方式は回路が単純で、出力にノイズ等も交じりにくいといったメリットがありますが、電圧降下による損失が大きく、電力効率が悪いです。(大体50~60%の範囲が多いような気がします。設計方式により前後します。)

また大型になればなるほど放熱設計等も急激に大きくなるので(消費電力は電流の2乗に比例する)この方式の電源は小型の電源に使用されているイメージがあります。よく実験で使用されている安定化電源等はこの方式の電源が多いと思います。

三端子レギュレータで作成する電源はこの方式の電源になります。

SW(スイッチング)方式に関して

SW(スイッチング)方式は、ドロップ方式の電源と同じようにトランジスタやFETを使うことは同じなのですが、制御方法が少し違っており、下記に示すように制御信号を高速にスイッチングで制御し、その出力をフィルターでなまらせて直流にする方式を使っております。

SW(スイッチング)方式電源 イメージ

この方式は少し構造が複雑になり、スイッチングノイズといったスイッチング周波数に依存したノイズが発生しやすいですが、電力効率が非常に高い(大体90%くらい)のが最大の利点であり、大型の電源を作りやすいです。

また回路構造によりますがインダクタンスを使用しているので、昇圧型、降圧型、昇降圧型というように入力電圧以上の電圧も出力出来るものも作る事が出来ます。

フィルター回路に関してはスイッチングの高周波成分を吸収して直流出力に近づける動作を行っております。

三端子レギュレータとは

上記の内容をふまえて、三端子レギュレータとは三本の端子を持ったドロップ式電源ICの事であり、簡単に直流電圧を作り出す事が出来る素子になります。ちなみにですが、基本的に三端子レギュレータは定電圧を作り出す素子なので、定電流を作るものではありません。

外観は下記の通りになり、文字通り三本の端子を有しております。

三端子レギュレータ
外観イメージ図

三本の端子は各々入力,GND,出力となっており※1、入力に電圧を入れる事により欲しい電圧が出力部から出力されます。この時GND(グラウンド)は入力電源と出力で共通にして使います。

※1 : ものによっては逆になっている事もあるので、使用する際は必ずデータシートを確認する事

入力と出力の電位差は基本的に3V程度はあったほうが良いとされています。(低ドロップタイプもあるが、一般的には3V程度の電圧降下を見込んだほうが良い)

製品としては正電源の7800シリーズ負電源の7900シリーズがあり、用途に応じて使い分けます。

次項より内部回路に関して説明し、シミュレーションした結果を記載致します。

内部回路

三端子レギュレータのシリーズレギュレータといったものの一種になり、シリーズレギュレータの基本的な回路ブロック図は下記の通りになります。

シリーズレギュレータ ブロック図

上記のブロック図を回路図方式に直すと下記のようになります。

シリーズレギュレータ 回路ブロック図

上記ブロック図を重ね合わせた結果は下記の通りになります。

シリーズレギュレータ 回路ブロック図 重ね合わせ

各項目に関して説明します。

レギュレータ部

こちらは入力から入ってきた電圧を変更する部分になります。後ほど説明する誤差増幅器からの出力値によって抵抗値が変化する可変抵抗のような役割を担います。

その為、入力と出力の電圧差と流れる電流によって消費電力が決まり、ロスが生じます。

追加でつけているダイオードは、入力が出力より小さくなった場合に電流が流れる経路として使用されます。トランジスタ等の素子は出力電圧が入力電圧より5~6V高くなった場合に破損する可能性があるので、保護用として使用しております。

出力電圧検出回路

こちらは抵抗器の分圧回路を用いた出力電圧検出回路になります。出力された電圧を検出する機能を持っており、回路図としては下記お通りになります。

抵抗分圧回路

入力電圧Vinは抵抗R1,R2によって分圧され、電圧Voとして出力されます。本回路ではVo=Vinの値に持っていきたいので、R2の値を無限大(接続無)で考えて接続しました。

基準電圧源

この基準電圧源とは、出力電圧を決める電圧源の事を指しており、この基準電圧Vrefを元にVo=Vrefになるように誤差増幅器がレギュレータを制御します。

三端子レギュレータはそのIC自体でこのVrefが固定になっており、78XX または 79XXのXXの部分にその電圧が記載されております。(例えば今回使用したのは7805なので5V出力)

誤差増幅器

誤差増幅器は基準電圧源と出力電圧検出から得られた結果を比較してその誤差を増幅させるものになります。下記に示すようにオペアンプをつかった位相保証を含む回路のようになっており、この回路を用いてレギュレータ部にフィードバック出力をしております。

誤差図服器 回路図

誤差増幅器を用いることで、三端子レギュレータは出力電流が変動しても、出力電圧はVrefを維持するように動作致します。

動作シミュレーション

上記の回路をシミュレートしてみました。シミュレートにはLinear Technology社のLTspiceを使用させて頂きました。フリーのソフトになりますのでリンク記載致します。(リンク)

その際の回路図が下記の通りになります。

シミュレーション回路

動作としては、12Vの入力に対して、VoがV1の電圧になるように追従した回路になります。レギュレータとしては、PNPトランジスタ(LTspiceの標準ライブラリ品を使用)を用いてOP07を使って制御致します。出力波形の結果は下記の通りになります。

波形の動作が分かりやすいように100ms間隔(mは1/1000)でステップ上に動作させました。

シミュレーション結果

出力電圧Voは基本的にVref(V1)に追従して動いております。ただ、少し電圧が跳ねているような部分(オーバーシュート)があり、誤差増幅制御器による制御動作がされている事が分かります。

下記に作成したファイルを置いておくので、気になったかたはダウンロードして頂けたらと思います。

[wpdm_package id=’550′]

[wpdm_package id=’552′]

簡易熱計算

※2023/6/5更新

三端子レギュレータを使用する際の熱計算を簡易的に行ってみます。下記に熱回路の簡易イメージ図を記載致します。

三端子レギュレータ 簡易熱回路

Tjを接合部の温度、ジャンクション温度として基準に置き、θjcは接合部とケース間の熱抵抗、θcをケースの熱抵抗、θchをケース-ヒートシンク間の熱抵抗(グリースを使用)、θhaをヒートシンク-周囲の大気までの熱抵抗、TAを周囲の雰囲気温度として計算してみます。

計算の準備としてヒートシンク、熱伝導グリス、三端子レギュレータを用意致します。

今回は仮計算として下記の3つを使用するように致しました。全て秋月電子通商で購入出来ます。

NJM317Fのジャンクション温度(Tj)を考えます。

ここでNJM317Fのデータより、θjc = 5℃/Wになります。θcは記載されていなかったのでひとまず保留し、θchは熱伝導グリスの特性より、8.98 x 10^-5℃/W, θha = 11.9℃/Wとします。

θcに関しては、NJM317FのデータシートNJM317DL1A消費電力特性例のグラフより、10℃/Wの線より、周囲温度、ジャンクション熱抵抗、ヒートシンク熱抵抗、Tj=150℃という値を使用して約7.5℃/Wという計算結果が出ました。

これらの情報を元に消費電力Pを加えた時のTjを考えると、

Tj = (θjc+θc+θch+θha) x P + TA

となります。

ここでTA = 25℃、Tjの最大を150℃(データシート参照)とすると、使用できる電力Pは

P = 約5.7W

になる。こちらは最大出力なので普通は使わない。ここでTj = 110℃と仮定すると

P = 約3.9W

になる。こちらが実際に使用する時の実用的な数値と考えられる。

このNJM317Fの電圧ドロップ率は通常3Vくらいなので、大体1.3A程度までは出力出来そうです。(固定電圧で考えた場合)

可変電圧源として考えた場合は、入力電圧に対しての出力電圧の差が大きくなることがあるのでそこを考慮して設計しないといけないです。

三端子レギュレータを使った回路例

※2023/6/8更新

三端子レギュレータは入力電圧を制御して一定の電圧を出力するICになります。簡易熱計算の章で使用したNJM317Fは可変三端子レギュレータといったもので、可変抵抗を使用する事で出力電圧を可変することが出来ます。

可変レギュレータのブロック図を下記に記載します。

可変レギュレータ ブロック図

こちらかNJM317の使用例の一つです。こちらではRvを可変させることで出力outの電圧を変更する事が出来ます。

出力outの式は下記の通りになります。

$$out = V_{REF}×\left( 1+ \frac {R_{v}}{R_{1}} \right) + R_{v}× I_{ADJ}$$

式からわかる通りRvに依存して出力電圧のoutが出力される。ここで電力に関して考えてみる。NJM317は出力可変電圧範囲が1.25V~37Vとなっており、レギュレータによるドロップは最小3Vは必要と記載されている。

ここで入力電圧を40Vとし、前の章で求めた最大消費電力を3.9Wとして現実的な出力可能な電流範囲を調べてみると、下記の通りのグラフになる。

可変電流範囲

上記のグラフより、大体100mA程度までだったら低電圧側でも使用可能との事が分かった。(低電圧出力のほうが電圧ドロップが大きいので消費電力が大きくなる。)これにより、1.25V~37Vの範囲で最大100mA程度なら出力は問題ないことが分かった。こちらを使って電子工作に使用できそうな簡易的な定電圧電源が設計出来たと思われる。

まとめ

三端子レギュレータに関しての簡易的な説明および簡単な設計ををさせて頂きました。

基本的に電子工作では、シミュレーションのような動作をさせるような事は少ないと思うので、気になった時にシミュレーションで確認で良いと思います。

三端子レギュレータ回路の中には他にも電流制限回路や保護回路等が組み込まれているので、また時間があったらこれらのシミュレーションもしてみたいと思っております。

設計も行ってみたので今度自分で作って動作を確認してみたいです。

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